経済学の世界で、しばしば、日本はサービス業の生産性がアメリカなどに比較して低いと言われます。そのことに関係あるのかどうか私にはよく分かりませんが、海外出張などで経験した他の国の実例です。日本のサービス産業は製造業に比べて合理化投資があまり実行されていないのではないかと思います。この原因は日本の法令規制に由来するためかどうかは分かりません。しかし、単純に日本と外国との文化や習慣の差だと言ってしまってよいのでしょうか? 消費者の利便性を考慮した合理性があると思います。
外国の日常生活で合理化されていると感じた例です。
1. 映画館の座席選択
タイ国の首都、バンコク市内の有名映画館の2003年頃の話ですが、そこでは、劇場入り口ゲート付近に若いスタッフが一人か二人いるだけです。いやにスタッフが少ないなと思いましたが、チケット購入は日本の銀行のATMのようなパソコン液晶画面をタッチして自分の好きな座席を選択するだけといたって簡単です。東南アジアでこれはどうしたことかと少し驚きましたが、感心いたしました。これを見ると、日本は先進国だったのかなと疑問を抱きました。恐らく、バンコクの方が日本より数十年先を進んでいるでしょう。
一方、日本はたくさんのスタッフを抱えて、お客と口頭で、「どこにしますか」「指定席ですか」などやりとりをして時間がかかり、いつも行列発生すること甚だしい。しかもワーナーマイカルでは、最近でこそようやく自分の座る座席を選択できるようになりましたが、当初は指定席でありながら映画館側が座席を指定してお客の希望する座席を取得させないという、横暴で不合理極まりないやり方でありました。
指定席でありながら座席を個人の希望で指定できない例として、航空機がありますが、これは、空を飛ぶため重量が偏らないように重量配分を考慮するためという合理的な理由が存在するからであり、映画館においても航空機同様のやり方を行うのは、消費者を無視したやり方だと思います。
2. 銀行の預金通帳の記入
赤道直下の国であるシンガポール共和国には英国系のスタンダード・チャータード銀行(Standard Chaereterd Bank)がありますが、「預金通帳」はありません。この銀行は毎月一回 「マンスリー・ステートメント(Monthly statement)」という「預金の出し入れ」をコンピュータで出力したA3版書類を郵便で預金者の自宅まで郵送してきます。おまけに、銀行がこの書類をはさむフォルダーをくれますので、数ヶ月分ファイルして、不要になれば書類は捨てたらよい。預金の毎月の出し入れは1年間も保管する必要はありませんから。-- 合理的ですね!郵送費は銀行負担です。預金者サービスとはこういうことだと痛感したものです。
これに引き換え、日本の銀行は、ご承知のように、預金者が必ず、銀行のATMの設置場所まで行かないと預金通帳の記入ができません。サラリーマンは平日に通帳記入をしに行く時間はないですからね。遠隔地居住者や独身者や仕事で忙しい人には大助かりです。
3. スーパー・マーケットやデパートの支払いレジ
アメリカはイリノイ州に今から21年前の1988年に仕事で滞在した時の経験ですが、スーパー・マーケットでは「購入数が5品目以下の専用レジ」というのが、存在します。その名前のとおり購入品目が5種類以下の場合はその専用レジにいけば、あっという間に支払い完了です、全く並ぶ必要がありません。世の中は大家族ばかりではありませんし、独身者で購入品目が少ない人には大助かりです。
そして、デパートの支払いレジは「クレジット・カード支払いの人」のレジと「現金支払いの人」のレジに分かれています。これは、アメリカもシンガポールも同じだったと思います。クレジットカード主体の国だからこうなっているとは言えないと思います。実際には、つり銭の出し入れを行うので意外と現金支払いの方が時間がかかるのですね。クレジットカードは磁気をこすって、サインするだけ又はサインも不要な場合がありますので、処理速度が速いのです。
合理的ですね!消費者の利便性を優先して、行列が発生しない工夫がなされていると思います。まさに「時は金なり(Time is money)」です。
これらの事例を見ますと、要するに、消費者側に選択の自由があるということ及び、昔のロシアではあるまいし、行列をいかに少なくするかに配慮がされていることだと思います。そういった意味で言葉の問題を除けば日本人でもまさに外国人ですが、暮らしやすさを感じました。サービスというのは、料金を無料にするとか銀行がティッシュペーパーを配るということがその真骨頂ではなく、上に書いたような事ではないでしょうか。
そういえば、サービスとは何かについてこれに近いことを「ワタミ」の渡邊社長が以前にテレビで発言されていたような記憶があります。知っている範囲で分かっている人は渡邊社長だけでした。しかし一般的には、日本では供給者側の都合で運営されておりかつ合理化投資が行われていないと思います。
関連話題として、渡邊社長は9月に土曜日朝のテレビで、「不景気だが従業員は絶対に解雇しない。もし採算が30%悪くなったら、給与を社長も含めて30%下げるが、それでも解雇はしない」旨、従業員に説明したということでした。すごいです。
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